2023.06.15

コラム

墓じまいを無視するとどうなる?お墓の放置はトラブルの原因に

お墓の後継者不足や少子高齢化が深刻化する昨今、お墓の維持管理が困難となり、墓じまいを検討する人が増えています。

本来、適切に維持管理できないお墓は、墓じまいすべきです。一方で、墓じまいの手続きや方法がわからず、お墓を放置する人が多いことも事実です。

そこで本記事では、墓じまいの方法や費用相場に関する情報を整理しながら、墓じまいを無視してお墓を放置するとどうなるのかを解説します。

「墓じまいを無視」お墓はどうなる?

墓じまいとは、お墓の墓石を解体・撤去し、墓地を更地にして使用権を管理者に返還する一連の作業のことです。

墓じまいを無視してお墓を放置すると、最終的にお墓が強制撤去される可能性があります。また、撤去工事にかかった費用の請求をされることがあります。

しかし、いきなり撤去されるわけではありません。お墓の管理費を支払っていない状態が一定期間続くと、お墓が撤去されることがあります。

お墓の撤去は、次の流れで行われます。

・管理費の未納や滞納に関する督促が届く
・官報に氏名が掲載され、使用者確認の告知を受ける
・告知を無視すると、無縁仏としてお墓が撤去される
・ご遺骨が取り出され、合祀される
・墓石の撤去と更地作業が行われ、次の使用者の募集が始まる

日頃からお墓の手入れをしていても、管理費を支払っていないと撤去される可能性があるため、注意しましょう。

官報に氏名が公示される

お墓の所有者は、寺院や霊園といったお墓の管理者に対して管理費を支払います。管理費とは、お墓を置いてもらうための費用や、施設の維持管理費のことです。

管理費の未納・滞納が続くと、お墓の所有者に対し、支払いに関する督促が届きます。督促に対して何も連絡せずにいると、お墓の見えやすいところに立て札が立てられたり、官報に掲載されたりします。官報とは、国が発行する機関紙のことで、法令等の制定・改正や裁判内容などが掲載されています。

このように、「いきなり撤去」されるのではなく、まずはお墓の所有者に対する注意喚起が行われます。

無縁仏として撤去される

管理費を未納・滞納しても、すぐにお墓が撤去されるわけではありません。しかし、管理費の督促や官報の氏名公示を1年間無視すると、無縁仏としてお墓の撤去手続きが進められてしまう可能性があります。

無縁仏とは、親族や承継者がおらず、管理する人がいなくなったお墓のことです。いわゆる、無縁墓(むえんぼ)です。

墓石の撤去と更地作業が行われ、お墓の強制撤去が済んだあとは、次の使用者の募集が始まります。

一部の自治体では、無縁仏の増加を防ぐために墓じまいの補助金を支給しています。墓じまいの費用負担を軽減したいとお考えの方は、お墓のある自治体の窓口に確認してみましょう。

ご遺骨は合祀される

無縁仏としてお墓が強制撤去されると、お墓に納められていたご遺骨は取り出され、ほかの無縁仏と一緒に合祀されることが一般的です。

合祀されたご遺骨は、二度と取り出せません。

合祀されることを知らずにお墓の管理者からの通知や連絡を無視すると、取り返しのつかない事態になってしまうため、注意が必要です。

公営墓地・民間霊園では撤去されないこともある

公営墓地は、墓石撤去や整地作業などの費用が税金でまかなわれています。

無縁仏が出るたびに撤去していると費用負担が大きくなるため、管理費の未納・滞納があっても公営墓地ではすぐに撤去されない傾向にあります。

また、民間霊園では、墓地区画に余裕があれば、いきなり撤去される心配はありません。

「墓じまいを無視」が許されないお墓の後継者とは?

「自分がお墓を承継することはないだろう」と思っている方は要注意です。なぜなら、誰もがお墓の後継者となる可能性があるからです。

お墓は祭祀財産に分類されます。祭祀財産とは、先祖を祀るために必要な財産のことです。建物や現金などの相続財産とは異なり、分割ができず、承継する人を1人決める必要があるものと定められています。

民法第897条の規定は、次のとおりです。

(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
(引用:民法第897条|e-Gov法令検索

この条文では「慣習によって後継者を決めるが、被相続人(故人)の指定があればその者が承継し、それでも決まらなければ家庭裁判所が後継者を決める」ということが定められています。

つまり、被相続人(故人)の指名がなければ、誰もが後継者になる可能性があるということです

<h2>墓じまいを無視した場合のお墓の後継者に対する負担とは?</h2>

墓じまいを無視すると、将来的にお墓の後継者にはどのような負担が生じるのでしょうか。

次のようなことが考えられます。

・お墓の維持管理
・お墓の管理者との付き合い
・管理費やお布施代などの支払い

このような負担を避けたい場合は、早い段階で墓じまいを検討すべきです。

墓じまいが望ましいケースとは?

ここでは、墓じまいが望ましいケースを5つ紹介します。

特に「墓じまいすべきか迷っている」という方で、以下に該当する場合は墓じまいを前向きに検討してみてください。

・遠方に住んでいる
・お墓参りに行くのが難しい
・お墓の後継者がいない
・お墓の維持管理の負担が大きい
・子どもや親族に面倒をかけたくない

ひとつずつ見ていきましょう。

遠方に住んでいる

遠い場所に住んでいる場合、お墓参りをするのは大変です。往復の交通費や移動時間を考慮すると、相当な費用と労力がかかります。

遠方に住んでいる場合は、今あるお墓を墓じまいして、近所にお墓を新たに建てるか、お墓の管理が不要になる散骨や手元供養などの供養方法を検討することをおすすめします

お墓参りに行くのが難しい

「お墓の所有者が高齢である」「健康上の事情で外出できない」などの理由で、お墓参り自体が難しい場合もあります。

お墓の手入れや水やり、墓石の掃除などはお墓の所有者が行います。お墓の維持管理にかかる肉体的な負担は、決して小さくありません。

年齢や健康上の理由によってお墓参りに行けなくなる前に、墓じまいを検討しておきましょう

お墓の後継者がいない

自分の代までは適切にお墓を管理できたとしても、お墓の後継者がいなければ、将来的に無縁仏になる恐れがあります。

後継者がいないケースとして、「子どもがいない」「親族がいない」「みんなからお墓を継ぐつもりはないと言われた」などが考えられます。

誰も管理できなくなり、結果として無縁仏となってしまうのは、ご先祖様や故人にとっても悲しいことです。元気なうちに墓じまいや供養方法を検討しましょう。

お墓の維持管理の負担が大きい

お墓の所有者は、お墓の管理者である寺院や霊園に管理費を支払います。管理費の相場は、年間5千円から2万円程度です。

また、お墓の維持管理には、お墓参りの交通費やお布施代などが発生します。

これらの出費はお墓を所有している限り続きます。家計に余裕がない場合や、管理を続けていけるか不安に感じる方もいることでしょう。

経済的な理由や、将来にわたっての維持管理に不安を感じている場合は、墓じまいを検討してみてください。

子どもや親族に面倒をかけたくない

かつては子どもや親族がお墓を継いでいくという考え方が一般的でしたが、ライフスタイルや価値観が変化した現代においては、必ずしもそうではありません。

むしろ、「子どもや親族にお墓を引き継がせるのは申し訳ない」と考える人が増えている状況です。

子どもや親族に面倒をかけたくないという気持ちがある方は、墓じまいをご検討ください。

ただし、子どもや親族側がお墓を承継したいと考えている場合もあります。独断で墓じまいを進めるとトラブルに発展するため、親族一同で十分に話し合ってから決めるようにしましょう。

墓じまいの方法

ここでは、墓じまいの方法や手順を8つのステップに分けて解説します。

・ステップ1:親族の同意を得る
・ステップ2:お墓の現状を確認する
・ステップ3:墓じまいを申し入れる
・ステップ4:新たな納骨先を決める
・ステップ5:墓じまいを依頼する
・ステップ6:改葬許可証を受け取る
・ステップ7:ご遺骨を取り出す
・ステップ8:墓地を管理者に返還する

墓じまいをスムーズに進められるように、理解を深めておきましょう。

ステップ1:親族の同意を得る

墓じまいを進めるうえで最初にすべきことは、お墓の維持管理やご遺骨に関係する親族全員から墓じまいの同意を得ることです。

年配の方を中心に、墓じまいに抵抗感を覚える人は少なからず存在します。そのため、墓じまいを決めた理由や墓じまい後の供養方法などを丁寧に説明し、みんなが納得する形で進めることが大切です。

ステップ2:お墓の現状を確認する

次に、墓じまいを予定しているお墓の状態を確認します。チェック項目は次の3点です。

①お墓に入っているご遺骨の数(柱)
②お墓の大きさや面積
③土葬されたご遺体の有無

各項目に関しては、お墓の管理者や運営者などにあらかじめ確認しておくと、墓じまいをスムーズに進められます。

ステップ3:墓じまいを申し入れる

親族の同意とお墓の現状確認を終えたら、お墓の管理者に対して墓じまいを申し入れます。

お墓の管理者との関係が悪化する可能性があるため、伝え方には注意が必要です。決してご先祖を粗末にするわけではない気持ちを念頭に持ち、墓じまいを考えた理由や事情を丁寧に伝えるとよいでしょう。

ステップ4:新たな納骨先を決める

墓じまいの申し入れが済んだら、ご遺骨の新たな納骨先を決めます

遠方に住んでいてお墓を管理できない場合は、近隣のお参りしやすい霊園や寺院にご遺骨を移しましょう。お墓の管理自体が困難な場合は、散骨を検討することをおすすめします。

ステップ5:墓じまいを依頼する

墓じまいでは、墓石の撤去や墓地の整地工事を行い、原状回復する必要があります。

石材店や専門業者など複数の業者から見積もりを取得し、信頼できる業者に依頼しましょう。

ステップ6:改葬許可証を受け取る

ご遺骨を新しいお墓に移す場合、お墓が所在する自治体に「改葬許可証」を申請する必要があります。

申請には、添付書類として次の書類が必要です。

・埋葬証明書:現在のお墓の管理者が発行
・受入証明書:新しいお墓の管理者が発行

「改葬許可証」を取得せず、お墓からご遺骨を勝手に取り出して移動させることは、法律で禁止されています。手続きを怠らないよう注意しましょう。

ステップ7:ご遺骨を取り出す

お墓を閉じてご遺骨を取り出すときは、閉眼供養(魂抜きの儀式)を行います。

閉眼供養は、墓石の解体・撤去工事の前に済ませることも可能です。お檀家さんの場合は、お世話になっている菩提寺に依頼します。菩提寺がない場合は、墓地管理者や墓じまいの施工業者に相談しましょう。

ステップ8:墓地を管理者に返還する

お墓は、寺院や霊園などの管理者から借りている土地に建てられています。

そのため、墓じまいでは、お墓の撤去・解体、墓地の整地・更地などの原状回復工事を行い、その区画の使用権を管理者に返還しなければなりません

別の一般墓や永代供養墓へ改葬する場合は、新たな納骨先で僧侶の開眼供養(魂入れの儀式)を行います。

これら一連の流れが終われば、墓じまいは終了です。

墓じまいの費用相場

条件によりさまざまですが、一般的な墓じまいの費用相場は30万円〜300万円です。

墓じまいでは、一般的に次の費用が発生することがあります。

費用概要内訳
お墓の撤去費用現状のお墓の原状回復にかかる費用・墓石の撤去費用 ・閉眼供養のお布施代 ・離檀料
行政手続きの費用お墓の移動、ご遺骨の取り出しにともなう手続き費用・証明書類の発行費用
改葬費用改葬や散骨などにかかる費用・新たな納骨先を用意する費用 ・開眼供養のお布施代

詳しく見ていきましょう。

>>墓じまいの費用相場についてはこちらの記事で詳しく解説しています

墓石の撤去費用

墓石の撤去費用の相場は、1㎡あたり約10万円です

基本的に撤去費用には、お墓にある墓石を解体・撤去して処分する費用、墓地区画の整地・更地にする費用が含まれています。

閉眼供養のお布施代

お墓からご遺骨を取り出す際、僧侶を招いて、お墓に対して故人の魂を抜き取るための儀式を行う必要があります。その儀式が閉眼供養です。

一般的に閉眼供養では、読経をしてくれた僧侶にお布施を渡します。寺院によりさまざまですが、お布施代の相場は3万円〜5万円と言われています

離檀料

寺院が管理するお墓においては、離檀料が発生するケースもあります。離檀とは、檀家を辞めることを意味します。

離檀料は、これまでお世話になった謝礼として寺院に納めるお金です。離檀料の相場は、3万円〜20万円と言われています

行政手続き費用

墓じまいでは、ご遺骨の取り出しやお墓の移動などがともなうため、行政上の手続きが求められます。手続きには、自治体や寺院などが発行した書類が必要です。

必要な書類は次の3点です。

・埋蔵証明書(埋葬証明書):現在のお墓がある寺院などから取得
・受入証明書:新しい納骨先から取得
・改葬許可証:「埋蔵証明書」「受入証明書」を提出し、市区町村役所から取得

上記の証明書類の発行にかかる費用を合計すると、行政手続きの費用相場は数百円〜1,500円程度になります

新たな納骨先を用意する費用

お墓から取り出したご遺骨は、何かしらの方法で供養しなければなりません。供養するためには、新たな納骨先が必要です。

新たな納骨先を用意する費用の相場は、5万円〜250万円です。なぜ費用に大きな幅があるのかというと、どの方法で供養するかによって金額が異なるからです。

一般的に選ばれている主な供養方法と費用相場は、以下のとおりです。

・永代供養墓:5万円〜150万円
・一般墓:80万円~250万円
・納骨堂:10万円〜150万円
・樹木葬:20万円〜80万円
・散骨:5万円〜70万円

このように、費用は供養方法によって大きく変わります。故人やご先祖様たちの意思を尊重しながら、親族が納得する供養方法を選べるよう十分に話し合いましょう。

開眼供養のお布施代

以前のお墓から取り出したご遺骨を新しいお墓に納める場合、僧侶を招き、お墓に対して開眼供養を行う必要があります。開眼供養とは、お墓に故人の魂を入れるための儀式です。

開眼供養では、読経をしてくれた僧侶に対してお布施を渡します。閉眼供養同様、寺院ごとに異なりますが、お布施代の相場は3万円〜10万円です

墓じまいは無視せず業者に相談するのがおすすめ

墓じまいは手続きが多く、親族やお墓の管理者からの同意を得る必要があるため、ついつい先延ばしになりがちなことです。

スムーズな墓じまいを希望する場合は、プロの墓じまい専門業者への依頼をご検討ください。

墓じまい専門業者は、行政手続きや墓じまいにともなう業者の手配に加え、新しい納骨先の選定などをサポートしてくれます。また、親族やお墓の管理者の心証を損なわないように、墓じまいの意向を適切に伝える方法もアドバイスしてくれます。

ただし、なかには自社の利益ばかりを優先する悪徳業者も存在するため、信頼と実績のある業者に依頼するようにしましょう。

まとめ

本記事では、墓じまいの方法や費用相場に関する情報、墓じまいを無視した結果お墓がどうなるのかについて解説しました。

お墓の撤去に抵抗を覚える方もいますが、荒れ果てたままお墓を放置されるほうが、ご先祖様や故人にとっては悲しいことかもしれません。

お墓の維持管理が難しければ、墓じまいを検討してみてはいかがでしょうか。「墓じまいをしたいけど、何をすればいいかわからない」とお困りの方は、プロの墓じまい専門業者である「お墓の引っ越し&墓じまいくん」にお問い合わせください。

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【参考記事】

民法第897条|e-Gov法令検索

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