2023.06.16

コラム

墓じまいの方法|知っておきたい手順やトラブル対策、行政手続き

近年、お墓の後継者不足やライフスタイルの変化などの理由で、お墓の維持管理が困難になり、墓じまいを検討する方が増えています。

しかし、墓じまいは何度も経験するものではないため、「何をすればいいのかわからない」「行政手続きに必要な書類がわからない」といった不安を抱く方も少なくありません。また、よく調べずに墓じまいを進めると、親族や寺院などとトラブルに発展する恐れがあるため、注意が必要です

そこで本記事では、墓じまいの手順や行政手続きの方法、必要書類について解説します。墓じまいに関連したトラブル対策についても紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。

墓じまいとは

墓じまいとは、お墓の墓石を解体・撤去し、墓地を更地にして使用権を管理者に返還する一連の作業のことです

墓じまいでは、取り出したご遺骨をどのように供養するかを決める必要があります。

供養方法には、主に次のようなものがあります。

・ご遺骨を別のお墓に移す(一般墓、永代供養墓、納骨堂など)
・手元供養
・散骨

墓じまいと改葬の違い

改葬は、お墓のお引越しを意味します。つまり、お墓から取り出したご遺骨を、所定の手続きを行い、一般墓や永代供養墓など他のお墓に移すことです。

墓じまいは「お墓の撤去行為」のみを指しますが、改葬はお墓の撤去に加えて「別のお墓にご遺骨を改めて納める」という行為を含みます。

つまり、墓じまいが完了しても供養は終わっていないため、散骨や一般墓への改葬などの方法でご遺骨を適切に供養する必要があります。

墓じまいする方法|手順と進め方

墓じまいは、主に以下のような手順を踏みます。

・ステップ1:親族の同意を得る
・ステップ2:お墓の現状を確認する
・ステップ3:墓じまいを申し入れる
・ステップ4:新たな納骨先を決める
・ステップ5:墓じまいを依頼する
・ステップ6:改葬許可証を受け取る
・ステップ7:ご遺骨を取り出す
・ステップ8:墓地を管理者に返還する

全体の流れを知ることで、墓じまいを円滑に進められます。それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。

ステップ1:親族の同意を得る

最初に、お墓の維持管理やご遺骨に関係する親族全員から墓じまいの同意を得ます。

お墓に対する価値観は多様化しているものの、墓じまいに抵抗感を抱く人も珍しくありません。そのため、墓じまいの理由や墓じまい後の予定などを丁寧に説明し、一人ひとりに納得してもらうことが大切です。墓じまいはやり直しができません。トラブルを防ぐためにも、親族の同意を得てから墓じまいを始めましょう。

ステップ2:お墓の現状を確認する

次に、墓じまいを予定しているお墓の状態を確認します。チェック項目は次の3点です。

①お墓に入っているご遺骨の数(柱)
②お墓の大きさや面積
③土葬されたご遺体の有無

改葬手続きでは、ご遺骨1柱につき1枚の書類が必要です。また、お墓の大きさや面積は、墓じまいにかかる費用の算出に影響します。墓じまいをスムーズに進めるために、各項目に関してお墓の管理者や運営者などに事前に確認しておきましょう。

ステップ3:墓じまいを申し入れる

親族からの同意とお墓の現状確認が済んだら、霊園や寺院のお墓の管理者に墓じまいの意向を伝えます。

このとき、お墓の管理者には「埋葬証明書」の発行や閉眼供養などを依頼します。「埋葬証明書」は、お墓にご遺骨が埋葬されていることを証明する書類です。墓じまい後、新たな納骨先や散骨業者、自治体などに提出を求められることがあるため、大切に保管しておきましょう。

なお、お墓の管理者に墓じまいの意向を伝えるときは、伝え方に注意が必要です。不十分な説明や唐突な報告であったために、高額な離檀料を請求されたケースもあります。

決してご先祖を粗末にするわけではない気持ちを念頭に、墓じまいを考えた理由や事情を丁寧に伝えるよう心がけましょう。

ステップ4:新たな納骨先を決める

墓じまいをしたら、ご遺骨の供養方法を決める必要があります。主な供養方法としては、別の一般墓や永代供養墓への「改葬」、海へ散骨を行う「海洋散骨」などが挙げられます。

改葬する場合は、新たな納骨先(改葬先)の管理者に「受入証明書」の発行を依頼しましょう。「受入証明書」は、自治体から改葬許可を得るために必要な書類です。

散骨する場合は、近隣住民とのトラブルや法律違反を引き起こさないように、信頼と実績を備えた業者に依頼するよう心がけましょう。

ステップ5:墓じまいを依頼する

墓じまいには、墓石の撤去や墓地の更地工事などが必要です。これら墓じまいにともなう工事は専門知識や技術が求められるため、石材店や専門業者に代行依頼することをおすすめします。

墓じまいの費用は、墓石の大きさや墓地の面積などによって異なります。複数の業者から見積もりを取得し、費用やサービス内容などを比較したうえで代行業者を選びましょう。

ステップ6:改葬許可証を受け取る

ご遺骨を新しいお墓に移す場合、現在お墓のある場所の自治体に「改葬許可証」を申請する必要があります。

申請書には、現在のお墓の管理者が発行する「埋葬証明書」と、新しいお墓の管理者が発行する「受入証明書」などを添付します。

公営霊園や市営墓地の場合は、墓所の返還手続きも別途必要になることを覚えておきましょう。返還手続きの必要書類は、自治体によって異なります。詳しくは自治体窓口に問い合わせてください。

ステップ7:ご遺骨を取り出す

お墓を建てるときに「魂入れ(開眼供養)」という法要を行うのに対し、お墓を閉じてご遺骨を取り出すときには「魂抜き(閉眼供養)」を行います。

閉眼供養は、お檀家さんであれば、お世話になっている菩提寺に依頼します。菩提寺がない場合は、墓地管理者や墓じまいの施工業者に相談しましょう。場合によっては、閉眼供養は事前に行えるため、立ち会わずに墓石の解体・撤去工事の前に済ませることも可能です。

無事に閉眼供養が終わったら、納骨室(カロート)からご遺骨を取り出します

ステップ8:墓地を管理者に返還する

お墓は、寺院や霊園などの管理者から借りている土地に建てられています。

そのため墓じまいでは、お墓の撤去・解体、墓地の整地・更地などの原状回復工事を行い、その区画の使用権を管理者に返還する必要があります

専門知識や技術が必要な原状回復工事は、専門業者への依頼が一般的です。不十分なまま返還するとトラブルになる恐れがあるため、業者選びは慎重に行いましょう。

別の一般墓や永代供養墓に移して改葬する場合は、僧侶に依頼して新たな納骨先で開眼供養を行います。これら一連の流れが終われば、墓じまいは終了です。

墓じまい後の供養方法

墓じまい後、取り出したご遺骨をどう供養するのかを決める必要があります。墓じまい後の供養方法には、主に以下のようなものがあります。

・一般墓
・永代供養墓
・樹木葬
・納骨堂
・散骨

ここからは個別に特徴を解説していきます。メリット・デメリット、相場費用などを踏まえて、自分たちに適した供養方法を検討しましょう。

一般墓

現在のお墓から取り出したご遺骨を、新しく建てたお墓に移す方法です。相場費用は80万円〜250万円で、年間管理費を別途支払う必要があります。

【メリット】
・お参りできる
・先祖代々を供養できる
・親族からの賛同を得やすい

【デメリット】
・費用が高い
・管理が必要
・後継者がいないと購入できない

永代供養墓

永代供養墓とは、家族や親族に代わり、霊園や寺院などの墓地管理者がお墓の管理・供養を行う方法です。相場費用は5万円〜150万円です。最初から合祀となる形式や、契約期間が過ぎてから別の方のご遺骨と合祀される形式があります。

【メリット】
・費用が安い
・維持管理の負担が少ない
・宗教や宗派を問わず利用できる

【デメリット】
・お墓を継承できない
・親族の理解を得にくい
・一度合祀されるとご遺骨を取り出せない

樹木葬

墓石の代わりに樹木を用いたり、納骨場所の周囲に草花を植えて土の中に埋葬する方法が樹木葬です。お墓参りの際は、目印となるシンボルツリー(樹木)に向かって手を合わせます。相場費用は20万円〜80万円です。

【メリット】
・費用が安い
・緑や草花が多く雰囲気が明るい
・永代供養であるため後継者は不要

【デメリット】
・ご遺骨の取り出しが難しい
・納骨人数が多いと費用が高くなる
・季節によって彩りや景色が変わる

納骨堂

ご遺骨や骨壷を専用スペースに納骨できる施設のことを、納骨堂と呼びます。納骨堂の相場費用は10万円〜150万円です。

【メリット】
・費用が安い
・天候に関係なくお墓参りできる
・掃除や維持管理の負担が少ない

【デメリット】
・お供え物に制限がある
・預けられるご遺骨の数に制限がある
・お墓参りの実感がわきにくい

散骨

ご遺骨を細かく粉骨して海や山などに散布する方法が散骨です。「故人と縁のある海に還してあげたい」「故人は自然が好きだった」という想いから、海にご遺骨を散布する海洋散骨を選ぶご家族が増えています。相場費用は5万円〜70万円です。

【メリット】
・費用が安い
・後継者が不要
・維持管理の負担がない
・故人の希望や想いに応えられる

【デメリット】
・親族からの賛同を得られないことがある

海洋散骨を検討されている方はこちらもご覧ください【ブルーオーシャンセレモニー】

墓じまいの必要書類と行政手続きの方法

墓じまいには自治体の許可が必要です。

ここでは、行政手続きに必要な書類と手続きの方法を解説します。

改葬許可申請書を記入する

お墓の撤去には、お墓を管轄する自治体から許可を得る必要があります。

自治体で「改葬許可申請書」を入手し、必要事項を記入します。なお、遺骨の数(柱)1つにつき申請書1枚が必要です。

自治体によってはホームページから申請書をダウンロードできます。まずは管轄の自治体ホームページを確認してみるとよいでしょう。

埋葬証明書を取得する

「改葬許可申請書」の添付書類として、お墓にご遺骨が埋葬されていることを証明する書類である「埋葬証明書」を取得します

自治体によっては、改葬許可申請書と埋葬証明書が一体になっているケースもあります。その際は、書類にお墓の管理者の署名と捺印が求められることがあります。

墓地名義人の承諾書を得る

現在お墓を維持管理している人と改葬許可申請書の申請者が異なる場合のみ、墓地名義人から「承諾書」を得る必要があります。

「承諾書」は、自治体の窓口で入手するかホームページからダウンロードしましょう。

遺骨の受入証明書を入手する

新たな納骨先(改葬先)から、ご遺骨の受け入れを承諾している証明書類として「受入証明書」を入手します

ご遺骨の受け入れ先が決まっていなければ、自治体から改葬許可を得られません。

なお、手元供養のように改葬をともなわない場合は受入証明書が発行できないため、あらかじめ自治体窓口に相談しましょう。

自治体の役所に必要書類を提出する

手元に「埋葬証明書」と「受入証明書」が揃ったら、必要事項を記入した「改葬許可申請書」とあわせて自治体窓口に提出します。

自治体によっては申請者の認印や追加書類などを求められることもあるため、あらかじめ自治体窓口あるいはホームページで確認しておきましょう。

改葬許可証を受け取る

「改葬許可申請書」の提出後、自治体から発行された「改葬許可証」を受け取れば、無事に墓じまいができるようになります。

改葬許可証の発行手数料を無料としている自治体もありますが、一般的には数百円〜1,500円程度かかります。

墓じまいで起こりやすいトラブルの回避方法

お墓は、親族や残された家族にとって大切な場所です。価値観や意見が分かれることもあり、墓じまいをめぐる親族間のトラブルも珍しくありません。

また、お墓の管理者である寺院や霊園、お墓の撤去工事をする石材店と話がまとまらず、墓じまいを進められないといったトラブルも多く見受けられます。

ここからは、親族やお墓の管理者、石材店とのトラブルを回避し、円滑に墓じまいを進めるための方法を紹介します。

親族間で十分に話し合う

墓じまいでは、今あるお墓の解体・撤去が必要です。お墓を壊すことやお参りできないことに納得できない親族が、強く反発する可能性もあるでしょう。かといって無断で進めてしまうのも、トラブルの原因となりかねません。

そうした事態を防ぐためにも、墓じまいを決断した理由や事情を伝え、親族と十分に話し合うことが大切です。話し合いの際は、墓じまいの費用負担についても事前に合意を得ておき、書面に残しておくと安心です。

お墓の管理者に事前相談する

「墓じまいをすることに決めた」とお墓の管理者である寺院へ唐突に報告すると、納得してもらえず、場合によっては法外な離檀料を請求されることがあります。

離檀とは、檀家を辞めること、寺院との関係を断つことです。離檀すると、ごく一部の寺院から、これまでの謝礼として離檀料を求められることがあります。

離檀料は、あくまで感謝の気持ちを表すものです。法的な根拠はなく、支払う義務はありません。

このような寺院との離檀料をめぐるトラブルを回避するためにも、墓じまいを検討した段階で、お墓の管理者へ事前に相談するよう心がけましょう。なお、墓じまいの専門業者であれば、心証を損なわない適切な申し入れ方を教えてくれます。寺院とのやり取りに不安がある方は相談してみましょう。

信頼できる業者に依頼する

墓じまいでは、墓石の解体・撤去費用と墓地の更地費用がかかります。

これらの費用は、墓石のサイズや墓地区画の広さに比例して高くなる傾向にあります。また、寺院や霊園によっては指定石材店しか利用できず、割高な費用を請求されることもあるため注意が必要です。

墓じまいを検討中の方は、墓じまい専門業者や石材店に見積もりを依頼し、費用やサービス内容を検討したうえで信頼できる業者を選びましょう。

プロに相談する

墓じまいは、ほとんどの方にとって初めての経験になるため、不安を感じることも多いでしょう。墓じまいの負担や不安を少しでも軽減したい場合は、墓じまいの専門業者に相談することをおすすめします。

墓じまいの専門業者に依頼すれば、各家庭に最適なプランや供養方法の提案、行政手続きの代行サービスなどをトータルサポートしてくれます。ただし、なかには不必要な追加料金を請求したり、割高な費用を請求したりする悪徳業者もいるため、業者選びは慎重にしましょう。

まとめ

本記事では、墓じまいの手順や行政手続きの方法、トラブル回避方法などを解説しました。

墓じまいは、親族やお墓の管理者に丁寧に説明し、事前に準備することでスムーズに進められます。信頼と実績のあるプロの墓じまい専門業者に依頼すれば、よりいっそう安心できるでしょう。

「お墓の引っ越し&墓じまいくん」は、東証プライム上場・株式会社鎌倉新書のグループ会社である株式会社ハウスボートクラブが運営する、お墓の引っ越し・墓じまい専門サービスです。ご供養先は日本最大級の1万ヶ所以上で、これまで数多くのお客様のお悩みを解決してきました。

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【参考記事】

市営墓地が不要となったとき(市営墓地墓所返還届)|岡山市

改葬許可申請書|福岡市

改葬の手続き|宮崎市

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