2023.05.31
後悔しない墓じまいのために: プロが示す事例と解説
お墓はあるが、後継ぎがいない
後継ぎはいるがお墓を継ぐ気がない
田舎にお墓を残してある。等々
今あるお墓をかたずける事を最近は「墓じまいする」と言われております。
お墓にご遺骨が入っているのならばその遺骨をどこに持って行くのか
例えば、その墓地内にある永代供養墓に入れてもらう。
ご遺骨をご自宅近くのお墓に引っ越しをする。
ご遺骨を海洋散骨する。等々
お墓にご遺骨が入っているようであればその遺骨の行先を決めなくてはなりません。
まず何から始めればいいのか・・・
インターネットを見ても何が何だかわからない・・・
そんな言葉をよく聞きますし、この道を専門で行っている私どもにもわかりづらい。
そんな墓じまいを少しでもわかりやすく説明させて頂きたいと思います。
墓じまいをしようと決意を決める
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今入ってるご遺骨をどうするか悩む
そこで供養してもらう?(今あるお墓に永代供養してもらう?)
どちらかに移す?(永代供養墓?海洋散骨?樹木葬?納骨堂?一般墓?)
恐らく今後の費用負担を考えてどちらかに移す選択をされると思います。
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遺骨の証明書を作る=改葬許可書を作る
お墓のある市町村役場から改葬許可申請書を貰って改葬対象者の情報を記入する。(ほとんどの役所はダウンロードや郵送対応してくれます。行かなくても大丈夫です。)
新しいお墓から受け入れ証明をもらう。
今あるお墓の管理者から埋葬証明書を貰う(基本的には改葬許可申請書に記入欄があります。)
(寺院墓地は寺院の住職に、共同墓地は自治会長などに、霊園の場合は管理事務所に相談、誰にもらえばいいかは役所の職員さんがしっかり教えてくれますのでご安心を)
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離檀料の話は一切せずにお先祖を移したいとお墓の管理者に告げる
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閉眼法要(お墓の魂抜き)をやってもらう。
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お骨を取り出し新しい受け入れ先に届ける(郵送もできます。)
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お墓を更地に戻し返還する。
といった流れになります。
書類的な流れは割と簡単です。お寺さんの交渉は、ネットを信じずにプロに相談してからをお勧めします。話し方次第で大変になる事も多いです。
墓じまいのトラブルってあるの?
ご遺骨の受け入れ先とのトラブル、お墓を引き上げるお寺さんとのトラブル、親族間のトラブル、石材店とのトラブル、墓地管理者とのトラブルなど実際にあったトラブルをいくつか事例で上げさせていただきます。
【事例1】
墓じまいの行先として自宅近くの永代供養墓に納骨を頼んだが・・・
10年程前に伯母から「すぐ近くの永代供養墓を買ったから私が死んだら主人と一緒に永代供養墓に入れて欲しい」と頼まれていた。伯母が亡くなり、ご主人の眠る福岡のお墓を墓じまいをして永代供養墓のあるお寺にご遺骨を納めてもらった。叔母は迷惑をかけないようにと私たちの近くに永代供養墓を求めてくれたのだが、納骨をしてから年に2回6,000円の供養料の請求がある。あまりにお金がかかるので、その永代供養墓から叔父伯母を出してもらい自分たちのお墓に納骨しようと思ったが、「合葬をしているので出すことはできない」と言われ、このまま付き合いを続けていかなければならなくなってしまった。お寺さんはお金を残してもらったと思っているみたいで「かわいそう」と言ってくるが、うちは残してもらっていないので困っている。永代供養墓だからお金がかからないと思っていたが、そうとは限らない事をはじめから知っていれば伯母を止めることもできたのにと思っている。
管理費がかからないと言っていても合同法要や個別法要のお誘いがある所もあります。付き合わないでいるとお参りにも行きづらくなるのでと、参加はしなくてもご供養料の振込だけされている方もよく相談があります。迷惑をかけないようにとした墓じまいが、結果として亡くなった後に親族に迷惑をかけてしまう事もあります。事前に調べておくことも大切です。
【事例2】
お寺の中にはお墓が無く地域のお墓にお墓があったが・・・
両親には自宅近くに引っ越してもらい、田舎に実家とお墓を残してきたが車で2時間の距離だったのでそのままズルズル引き伸ばしていた。実家の敷地内に建ててあるお墓であったが近所のお寺の檀家になっていた。インターネットで墓じまいの手順を調べ、お寺に離檀の了承をもらい離檀料を支払ってきたが、のちに同じ墓所にお墓のあった親戚から墓じまいをした時に離檀料は払っていない事を聞いた。自分達で調べ手順に乗ってやったつもりだったが、自分からお寺に離檀料はいくらかと確認した事で支払う事になってしまった。
私たちの経験で、実際には離檀料の請求をされるケースはほとんどございません。インターネットでは離檀料の話が多く出てきますが、お支払いされている方の多くはご自身で「離檀料はいくらですが?」と確認されているケースか、自ら包んでいる方が多いです。
【事例3】
霊園ブームの頃に郊外の霊園を用意したが車に乗らなくなり、お参りが大変になってきたのでお墓を引っ越す事に・・・
お墓が足らなくなる。都内でお墓を求めることが出来なくなると、霊園ブームの頃にピクニック気分で行ける郊外の霊園を求めたが、車を乗らなくなると行けない事から、近くの納骨堂にご先祖を移そうと思った。当時、父親兄弟と3件並んでお墓を建てたが、営業さんの勧めで広く使えるように土台の部分はつなげて建ててもらった。石塔だけ解体すればいいと思っていたが、返還するには土台の部分も解体しなければいけないとの事で、左右のお墓の補修工事に莫大なお金がかかるという。そのため、今も土台だけ残してあり、管理費を支払っている。いずれ親戚も近くに移すことになると思うが、今の段階だとその予定はなく、つなげて建てなければよかったと後悔している。
昭和の終わりの頃から平成の初めの頃に都内でお墓が足りなくなるとニュースなどでも特集がありました。特に檀家にならずに宗教の自由性がある郊外の公園墓地が人気でした。本来お墓は代が続くことを前提に、子孫が少しでも楽なようにと永く使える石材を使いお墓を建てていましたが、少子化、核家族化が進み、お墓の後継問題も難しくなってまいりました。最近では永代供養のついた納骨堂や、ご夫婦で入る永代供養墓、お墓を建てない樹木葬など、お墓の考え方も変わってまいりました。「墓じまいをする」という事はそのお墓の永代使用権を返還して、お墓を更地に戻す義務があります。連結で建てているのも、その時は兄弟で仲が良いという事もありますが、次の代、その次の代になると疎遠になる方も多いです。お石塔を中心に左右に納骨室を造り、外柵を建てているので、1件抜けると外柵左右の石材も必要になります。その石材をご親戚が払って建て直すという事はございませんので、ただお墓を撤去するに比べても倍以上の工事費がかかることが多いです。仲が良ければ、工事を許してもらえると思いますが、仏さまが入っているお墓の改修工事をすることを嫌がる方もおります。つながっているお墓であれば費用的にもご親戚とのお話しとしても心積りが必要になります。
【事例4】
墓じまいをするためにお墓の撤去工事の見積を取ったが追加料金がかかり高額になってしまった・・・
地元の共同墓地に先祖代々のお墓を持っていたが、自宅からは車で2時間かかるので墓じまいをする事にした。撤去工事の見積もりを3か所からもらい、1か所には下に古いお墓が埋めてありそうだと言われていたが、少しでも安いところにと思い撤去工事の依頼をした。いざ工事をしてもらうと、言われていた通りお墓の下に古いお墓の石材が埋めてあり、最初の見積もりよりもかなり高額な追加料金がかかった。
お墓を建て直すときに古いお墓を埋めてあることが良くあります。墓じまいをするとしましたら地中の障害物もきれいに撤去しなくてはいけません。公営の霊園でも撤去工事後には杭を指して地中に何か残っていないか確認をする霊園がほとんどです。見積してくれる業者さんにもよりますが、知識が浅く地中の確認をしない業者さんもありますのでご注意ください。
【事例5】
父親の同級生が務める石材店に墓じまいの依頼をしたが・・・
田舎にお墓が残してあり、今回父が亡くなったことをきっかけに墓じまいをすることにした。お墓の土地は共同墓地だが、一件一件のお墓が個々に登記されており名義は曽祖父のままだった。司法書士さんに相談したが、その土地の売買にあたっては大勢の承諾を貰わないといけないという事で200万円ぐらいかかると言われた。税金がかかっているわけではないので、そのままにしておいた方がいいと司法書士さんに言われ、せめてお墓だけでも撤去してもらおうと父の同級生が務める石材店に依頼。新しいお墓を買った石屋さんも見積を取らせてくれと頼まれて見積してもらったが、金額があまりに違うので撤去範囲や内容を問い合わせたら、やはり全て撤去してくれる見積りとの事だった。その事を、見積もりを取ってくれた石屋さんに伝えたら、ご自身たちの処分費用よりも安くやってくれているので、お父様のお友達という事であれば、今後別案件の時に下請けとして紹介をしてもらいたいとの事で紹介させて頂いた。後日石屋さんに聞いたら、処分はそちらの工場の裏山に埋めているらしく処分費がかからないので安かったと伺った。そのお墓がいずれ何らかの形で出てきたらどのようになるのか少し心配をしております。
お墓は石材で出来ていることが多く彫刻した文字もずっと残っていきます。いずれ何らかの形でお墓が出てきたとすれば不法投棄とみなされることもあります。現在は排出者責任もあり、もう一度費用を払って処分をしなければならなくなることもあります。処分方法も詳しく確認が必要です。
【事例6】
墓じまいをして新しい納骨堂にご遺骨を持って行ったが・・・
田舎に残してあった代々のお墓を墓じまいして、ご先祖10人分を新しく求めた納骨堂に持って行くと、遺骨の洗浄、乾燥、粉末化、など、墓じまいの費用以上にお金がかかった。初めから言ってくれていればもう少し考えられたのに失敗をしたと思っている。
納骨堂は特に遺骨の処理にお金がかかることがあります。土混じりのご遺骨や土葬のご遺骨も処理にお金がかかります。撤去工事をしてくれる石屋さんでも撒いてあるご遺骨を土ごとごっそり送ってくれることがあります。私たちは自分達である程度の処置はできますが、一般の方だとその土の処分も困られると思います。いずれにせよ受け入れ先の費用も事前に確認しておかれると良いと思います。
まとめ
トラブルはいくらでもありますが、何もトラブルなく墓じまいができたケースがほとんどです。ただ話し方次第で変わってしまう事も多いですし、ネットに出ている情報は面白おかしく書いてあったり、各方向のお金儲けが絡んで書いてあったり。
相談を受ける方の中には、「どうせそのお墓を空けたらまた売るんでしょ!そうしたら儲かるじゃん」なんて言われることがありますが、人が使っていたお墓に入りたい方も、新しく檀家になりたい方もとても少ないです。販売するとしても莫大な広告宣伝費がかかるので、そのまま残っていてもらう事がお寺さんにとってはとても安心なのです。今までお世話になったお墓なので、感謝の気持ちも必要です。お墓は思いやりの形です。ご先祖に対しての思いやり、ご先祖の子孫に対する思いやり、墓じまいも、思いやりだと思っています。
どうか思いやりの気持ちをもって墓じまいをすすめて下さい。気持ちよくスムーズに進むと思います。
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